窓辺の猫みち

　私が15歳の時、母が傷だらけの痩せ細った子猫を連れ帰ってきました。子猫はタカと名付けられ、家族の一員になりました。以前放し飼いしていた猫が戻って来なくなった経験があり、タカは室内飼育で常に家族と一緒に過ごしました。

　私が学校でいじめられ、悔しくて落ち込んでいた時、タカはいつも寄り添って元気づけてくれました。猫が持つ”人の心を癒す”不思議なパワーに何度も支えられ、私はタカと共に成長していきました。そして20年近く経ち、ようやく私の結婚が決まったことに安心したのか、タカは静かに息を引き取りました。

　猫が第一優先する”身の安全”が確保される室内飼育のおかげか、長生きしてくれたタカ。しかし振り返ってみると「もっとこうしてあげればよかった」と思うことが次々に出てきました。当時は、猫が高いところから見下ろすことで安心する、日向ぼっこで心身の健康を保つ、身体を動かすことでストレス発散する、などの猫の性質や特性を知らずに飼っていました。もっとのびのび自由に過ごせる、タカにとって快適な”暮らし”を実現できたのではないか。自分が辛いときにタカに支えてもらった、その恩返しが、果たして自分にできていたのだろうか。そんな風に考えると、胸がギュッと苦しくなりました。

　父の影響を受け、建築業界に身を置くこととなった私は、人の暮らしを豊かにするだけでなく、大切な家族の一員であるペットの暮らしも豊かにする空間作りを実現したいと考えるようになりました。

　猫を室内飼育する家庭が増える中、猫が幸せに暮らせる家を、建築の観点から見直して提案したい、そんな想いが芽生え始めました。

　建築の専門家というだけでは、”人間が気に入る”素敵なキャットウォークを作っても、猫が気に入ってくれるとは限りません。また、人間にとって快適でも、猫にとってはストレスフルな住宅設計となってしまう可能性もあります。

　建築の技術と知識に、猫に関する知識もプラスすることで、猫にとって快適で幸せなキャットウォークを実現するものが「窓辺の猫みち」です。

　猫も、個体によって性格、性質が異なります。そのため、飼い主様のお話をじっくりと聞き、”この猫ちゃん”が気に入る場所、”この子にとって”丁度いい高さ、”この家の構造ならば”こういうレイアウトなら安全、といった個々に合わせたご提案をいたします。

　あなたと、あなたの猫ちゃんにとって健康で快適、そして幸せな居場所を作るのが私の役目です。